筋肉少女帯ライブ・過去日記アーカイブ(1989〜)

筋肉少女帯の活動履歴、ライブ感想などを記録したアーカイブです。(非公式)

*【筋少ファン日記のあゆみ】

*【2003年発行「筋肉少女帯の活動記録1979〜2003」無料DL】

(113ページ PDF書籍 ディスコグラフィー・ライブレポート)

アルバム「LOVE」発売 筋肉少女帯@タワーレコード新宿店インストアイベント

イベントから2週間以上とだいぶ経って記憶が薄くなってしまったのだが、イベントで1曲づつ話してた印象をメモと、自分がアルバムを聴いた感想を書く。

全曲オリジナル新曲、作詞は全てオーケン
今回は映画やアニメなどのタイアップ曲はなしだった。

・愛は陽炎
橘高さんの曲。コメントでは橘高さんがたたみかけるような早口で作曲のポイントを解説してた。メインになるメロディを繰り返しずっと使うことでの展開を試みたという。Bメロで変わるような感じだが基本はAメロのタラララーっていう感じが続いている。
オーケンは最初に試聴イベントのときにライブで1曲目にやったら全員しぬからやらない(笑)って言ってた速い橘高メタル曲で、近年だと「おわかりいただけただろうか」や「ゾロ目」などの橘高さんらしい感じ。強い風が吹いて花が舞うみたいなイメージの激しく美しいピアノとバッキングの刻むギターと速いリズムが筋少にしかないと思う。歌詞はこれもオーケンの書くテーマの一つみたいになってる運命の二人の恋みたいな系統で、オーケンがインタビューなどで言ってた最初に絶望的な言葉を出したのは、たしかに昔からよく言われてるような言葉だよなと腑に落ちる。そして最後に本当に好きな人と結ばれたいっていう願いを置いて、陽炎のイメージを思い起こして切ない余韻がのこるのが好き。

・from Now
内田さんの曲。発売前にアニソンなどやってる女性ユニットのZweiから曲提供のオファーがあって、内田さん指名で来て「ダメ人間」や「これでいいのだ」あたりのイメージでと発注があったそうで。そこで内田さんはワッショイワッショイと掛け声と70年代80年代洋楽ハードロックをテーマに作ったらしい。インタビューではジャーニーやTOTOをイメージした妄想ハードロックという話で、KISSやディープパープル風な感じかなりある。内田さんらしいズンドコ感が要所に入ってる。水戸さんとやってる3-10とハードロック×歌謡曲の華吹雪の曲を彷彿させる。
歌詞はオーケン中野サンプラザのライブの当日午前に書き上げたそうで、当初は「みんなのうた」(NHKのやつ)タイアップの話があって子供向けの感じで作ったとのことで、結局タイアップは無くなったので残念だったが、なんかしらでスポットが当たるような機会があったらいいなと思う。素直に言葉に出して謝ろうというのを歌にして、オーケンが現在この歳になって伝えるメッセージソングになったなと思う。生きていれば伝えられるし、この世からいなくなってしまったら伝えられなくなってしまう。
何より自分にとっては思い入れのある好きな曲の「また会えたらいいね」が入ってるのが嬉しい。

・ハリウッドスター
おいちゃん曲。派手な感じで叫ぶ始まりの華々しさがおいちゃん曲らしい。オーケンが以前からよくおいちゃん曲にオケヒが使われてて80年代ぽさがあるという話も、この曲だなと思った。オーケンの映画知識がふんだんに歌詞に入ってて楽しい。掛け声の言葉はおそらくライブで(自分も)覚えきれなさそう。オーケンの映画業界テーマの詩はワインライダーをはじめに特撮でもシネマタイズとか色々とあって、今回は海外のハリウッドスターは何にでも規模が違うっていうのから、我々一般人はちっぽけだ。でも人生は誰もが映画の主役さっていうところに持って行く完璧なオーケンの作詞能力に今回も感心。

・ボーン・イン・うぐいす谷
オーケンがMV一億回再生でヒットを目指す渾身の1曲。発表されたときはえっこれがリード曲なのとたまげたが、一度聞いたら頭に残る(笑)
曲ができた経緯の話も面白くて、アルバムのために作ったのではなくてもっと前に何もないのに突然オーケンがこういう曲作ろうっておいちゃんに歌詞と指示書を送りつけ(笑)そしておいちゃんが作ってきた曲がベストマッチだったという。そしてアレンジが加わってできた、メンバー間の信頼と熟練の技術というかベテランの手腕と遊びココロというか。ムードラテン歌謡曲にハードロック、サンタナ風の泣きギターっていう。聴けば聴くほど味わい深い。このメロディほんとおいちゃん天才だなって思った。そしてオーケンの音楽に対する愛だね。洋楽ロックにある「ボーン・イン〜」ものをやりたかったってのに、歌詞に女の子視点を入れて恋人と別れたところまでを想像させる巧さ。

・妄想防衛軍
内田さん曲。エニグマから続いての内田プログレで、イントロから大仰でディープな感じは1stの頃から変わらない。今回アルバムではオーケンのオカルト要素が薄い中でオカルトっぽいけどストレートではない。インタビューなどで言ってた通りに昭和の陰鬱としたドラマのようなイメージ。お母さんがかなり年老いてるという設定がわかるのが今のオーケンだなと感じる。昭和生まれ男の哀愁的な。
余韻を残しながらフッって消えるラストがカッコイイ。

・ドンマイ酒場
これも内田さん曲で、最初に試聴イベントで聴いた時の衝撃とざわつきが(笑)そしてほろっと泣けてしまう。インストアイベントではたしか、こういうイメージの小さなゴールデン街みたいな店に大人になったら行くものだと思ってたけど行ったことないよねってメンバー間で話してた。
曲でメンバーがそれぞれセリフまわしをするシリーズの展開が次は小芝居という。おいちゃんが有頂天時代に当時ケラさんがライブ用に書いた台本がすごく厚くて覚えきれなくて苦痛だった話。まさか筋少でも演技をすることになったとはと驚く。ケラさんがその当時から、もう今の大人気脚本家としての片鱗がここからもうあるんだよね。それで当時おいちゃんがケラさんに言われたのが「お前はロックすぎる!」というセリフがふーみんのツボに入って、それ使いたいって言ってた。ケラさんはニューウェーブの人だから王道ロックとは違うことをやりたかったんだろうね。でもおいちゃんはストレートなロックも好きだから。
それで内容だけど、メンバーが演技してるのでもまず面白いんだけども、中高年になった我々が人生の失敗を振り返ってこぼしてるのを、これまた若い頃からずっとやってきて中高年になった筋少メンバーが話聞いてドンマイって声かけてくれるっていう。このシチュエーションが深くて泣けてしまうわけなので。生きて元気で音楽やって楽しめててよかったな、生きてこうって思う。

サクリファイス
橘高さん曲。これは外せないでしょうという筋少メタルで、インタビューなどでも話してたとおりに橘高さんの仮歌からサクリファイスで、オーケンはそれを受けてサクリファイスってジャパメタかと思って、結局そこから歌詞にそのまま採用されたというエピソード。でもそこはオーケンのすごいところで、人間の生贄を神のご褒美というテーマで恐ろしくも神秘的な感じになっている。鳥葬という終わらせ方がかっこいい。人間椅子の曲にもこういうのが以前あった。
あと昔に読んだ漫画でサクリファイスっていうのがあって、手元にもうないから具体的には忘れたけど。そしてDEAD ENDにもサクリファイスオブビジョンって曲があってそれを彷彿させたので、イントロもなんかすごいDEADっぽさがあったのでどの曲と近いか調べようとしたけどまだピンとこない。
ギターバトルって歌詞に入ってて、二人にギターバトルしてってオーケンがリクエストして入ったのが嬉しい。橘高さんがオーケンの一番かっこいいシャウトを引き出して作ったのではと思う。

・直撃カマキリ拳!人間爆発
おいちゃん曲で軽快な気持ちいい歌謡ロックって感じ。オーケンが歌詞をつけてきたらおいちゃんが喜んだっていうエピソード大好き。ストーリー性があってコミカルでばっちりはまってる。これもオーケンが映画や少年漫画でみてきた、男の子が老師について修行するっていうベタなネタが。そして昭和歌謡っていうか、女の子がほぼシブがき隊とかトシちゃんの歌詞イメージだと思う(笑)

喝采よ!喝采よ!
おいちゃん曲で、熱唱バラード系の曲。オーケンがスーツ着て熱唱する哀愁漂う感じで。おいちゃん弾き語りバージョンも素敵だから音源で欲しいな。メンバーみんなジュリーをイメージしてたっていうのも昭和歌謡曲の愛を感じる。出るだろう〜っていうのがそれっぽいし、最後にメロディ外して叫ぶのとかもいい。ステージの上で歌うことにしか生きれない、ステージでは輝いていて愛を歌うが降りれば孤独という対比も。

・ベニスに死す~LOVE
うっちー曲で今回のインスト曲。前作まではおいちゃん、ふーみんがそれぞれインスト曲を出してきたから、今回内田さんなのが嬉しい。トークで内田さんが作曲エピソードで、中古店で映画の「ベニスに死す」を見たっていう話がそのままなのかと思って驚いた。有名なタイトルだけど映画はあらすじだけ知ってるが見てない。美少年に恋をした男がストーカーしてかなわないまま死ぬ話なんだよね。美しさと物悲しさのコントラスト感と、水の都の風景を思わせる。

・Falling out of love
ふーみん曲で、メロディのきれいな系統の曲は前作だと「宇宙の法則」の流れをくむ感じ。今回は歌だけでなく語りがかなり入っていて、オーケンが今年はじめたオケミスで入れてる語り部の多い曲が、筋少でも取り入れられてる。世界観と風景が頭にすぐ思い浮かぶのは、本当にずっと最初から筋少の魅力である。ただ愛を歌うだけなのではなく、視点を変えているところも。これまでの曲に出てきた登場人物の人生がオムニバスのように繋がっている。恋する辛さから解放されて楽になる、でもまたいつか恋をしてしまうのが人間なのだという、そこで物語が最初から始まる。

もはや自分が言うまでもないが、今年も素晴らしい新曲アルバムが聴けて嬉しい。30年を超えたロックバンドが現在もアップデートし続けて活動しているという喜び。ライブも間違いなく素晴らしい。